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大沼の言う「その問題」というのは、文京を主体とする関東での所沢への経済制裁を指している。軍事クーデターに成功した所沢解放戦線が、各都市の反政府勢力と結びついて勢力拡大を図るのではないかという懸念から、ここ10年間一貫して行われているものだ。

「こちらの菓子は、十万石饅頭と申しまして、かつてこの辺りで獲れた味のよい米の粒の形を模したものです」
「これは、初めて目にしました。なんともツヤのいい生地だ」
「中は漉し餡です。お口にあえばよいのですが」

この会話を黙って聞いていた帆足が、やはり無言のまま大沼を小突いた。はやく本題に入れと言っているのだ。
その様子を見たガイエルは、口元を少し押さえて笑いを隠しながら言った。

「解放戦線一の戦士を、立たせたまま長くお待たせしてはいけないな。早速ですがお話を。まずは聖都を統べる高田繁総統からのお礼を申します。
 昨夜は突然の要請に素早く応えていただき大変感謝しているとお伝えするように申しつかってまいりました」

これを聞いて帆足ははじめて、昨夜の突然の輸送車襲撃指令の真相を悟った。
あのとき大沼は随分と正確に他都市の輸送車の通過時刻と場所を指定し、彼らを急がせた…、それらはすべて、聖都からの情報に基づいた行動だったのだ。


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