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森野は魂が10割満たされていたころの林を知らないので、そう聞かれても曖昧な返事しかできない。
しかし、うつむいて小さな声を出す林からは、覇気が感じられないどころか、森野にはそもそも気の使い手であるようにすら感じられなかったことは確かだ。
話によれば彼も優秀なハンターだということだが…、永川、前田はもちろんのこと、彼らより実力的にはかなり劣るはずの山崎や倉ほどのオーラも感じとれなかった。気とはこれほどに感情の影響を受けるものなのだ。

「んで、もしナーに万一なんかあったら、街中にスラィリーが出ちゃったときの駆除は梅ちゃんが率先してやることになってたんすよ」
「なってた?」
「ハンター協会でそう決まってるんです。代理を決めとくようにね。トップクラスのハンターに何かあったらとか普通にありえないんだけど、現実に梅ちゃんはやられたわけだし。
 ナーだって何があるかわからんでしょ、仮にスラィリーにやられなくても、例えば…、ねえ、酔っ払って車に轢かれて死ぬかもしれないじゃないですか?」
「まあ…、可能性としては」

返事をしながら、森野は前夜の永川をぼんやりと思い出していた。永川は決して酒に弱くはないが、飲んだ量に正比例して酔うタイプのようだった。
永川は自分自身の立場をよく理解しているだろうが、酒に酔っていたとしたら…、東出の言うような事故も、絶対にないとは言い切れないだろう。

「あと家でガス漏れ起こしたりとかさ、スラィリーに関わらず普通に暮らしててもそういう事故って一定の確率であるわけでしょ…、ああいや、あの掘っ立て小屋じゃガス中毒はないか、通気性バツグンだし。火事だったらあっちゅー間だね」
「あの、小屋の悪口はもういいから」
「とにかく、そういうとき慌てないようにって梅ちゃんが指名されてたんだけど、あんな風になっちゃったから…、」
「なるほど、それで、彼の代理を立てておかないとならないわけで…、本来ならばおそらく、林くんがその役に」
「そういうことです」

東出は足を組み替えながら、ひとつ溜息をついた。


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