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加えて、残る林も、接近戦にはやや弱いものの…、状況が良ければひとりでスラィリーを仕留められる。
彼は気を練って大小のブーメランを作り出す能力をもち、また戻ってきたブーメランを気に戻して再び吸収することができるため持久力に優れ、
そして最大限に大きく作ったものをスラィリーの頭部や首に直撃させれば、一撃で相当のダメージを与えられることは間違いない。
しかし、いかに狙いが正確でも、手付かずの密林の中で長径1メートルを超える大型の武器を存分に振り回すことは難しく、この点で彼はどうしても梅津に劣る。
2人に本来的な実力差はほとんどないが、三次山中でスラィリーを狩るという目的に限定した場合には、本来の実力を出し切れない林と地の利を最大限に生かした梅津を比較することになり、明暗がはっきりと分かれてしまう。
林が得意とするのは基本的に見晴らしのよい場所だ。例えば前日に永川と山崎が苦労して仕留めたスラィリーは、彼が出ていれば一瞬でカタがついた可能性もあるが、
そういう場面でのハントは割合的にそう多くはないのが現実だ。金の話をするならば、おそらくは猟師を廃業して、傭兵にでもなったほうが稼げるだろう。

典型的なスラィリーハントの場面における林と同程度の能力者なら、スラィリーハンター協会が把握している数多の人材の中にも、いくらかの人数がいることがわかっている。
しかしこれは、逆に言うなら、不適な条件下で限られた力しか出せない状態の林に並ぶ者も、数えるほどしかいないということだ。

さらには、犬というのも、ただの犬ではない。言わずと知れたゴールデンレトリバー、スラィリー狩りの供としてよく知られた存在だ。
スラィリーの放つ臭気を敏感に察知し主を助けるということだけを期待するなら、狩猟犬であれば何でもいい。しかしゴールデンレトリバーは、臭気だけでなく、スラィリーの気配をも感じ取るといわれている。
このとき彼らの連れていたのは、名をミッキーといい、つい最近老衰のため亡くなってしまったが…、地元の有名ブリーダーが育てた、過去には数々の輝かしい実績を持つ犬だった。
すでに高齢のため第一線は退いて久しかったものの、林によく懐いていたこともあり、季節になると時折彼に同行していたのだ。

つまり、これらを纏めて考えれば、通常のスラィリーハントにおいて失敗はまずないと思われるメンバーが揃っていたということになる――。


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