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☆ ☆ ☆

広島、三次郊外。
白のプレマシーは主に永川と東出の不仲による気まずい空気を高濃度に搭載したまま、数十分のドライブののち…、大きな白い建造物の前に広がる、荒く舗装されたスペースへと停車した。
なにしろ車内は気まずくてたまらない。森野はいち早く車外へ降り、まず正面にそびえる建物を眺めた。行き先は病院と言われていたから、それに対するイメージはすでに森野の中で出来上がっていたし、実際、そのイメージに大きく反するところはない。
違うところがあるとすれば…、三階よりも上の窓には鉄格子が取り付けられている点だ。それが何を意味するのかは、森野にもわかる、加えて立地が物語る。建物の背後は鬱蒼とした原生林。
周囲には民家もまばら、そのうち最も近くに見える一軒は遠目にもそれとわかる廃屋だ。周囲を取り囲む農地らしい土地も荒れ果てたまま放置されている。
つまりは、社会から隔離される必要があると判断された患者が、ここに暮らしているということなのだろう。
森野は玄関口の横に取り付けられたプレートを見た。「広池医院」という名がまず目に入る…、その左に診療科目がずらずらと記されているが、しかし、そのラインナップの中に精神科の記述はない。

「ここにはな、広島で唯一、つまり日本で唯一のスラィリー症候群の専門医がいる」

背後にいつのまにか立っていた永川が、察したように森野に向かって言った。

「専門医」
「いや、本人は来るものは何でも診るつもりでいるが、実際のとこはスラィリーの患者で埋まってるから、結局は専門になっちまってる」
「なるほど」

向こうでは東出と貴哉が何か会話しているのが見えるが、その内容は聞き取れない。

「ここの先生は凄くてな、医者と研究者で二足のワラジだから、外来の診療時間も短くて。あまり時間がない。行こう」
「ああ」


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