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「…殺したのか、」
「気絶してるだけだ」

あっという間の出来事だった。一撃の蹴りで人を殺すということは、実のところさすがの帆足にも少し難しい注文だったが、ピクリとも動かなくなったそれが死んでいるのかそうでないのか、大沼の目にはすぐに判断がつかなかったらしかった。
ムリもない。つまりはそれくらいの…、頚椎も一撃でへし折らんばかりの勢いだったのだ。

「そうか…、」
「同じことだがな」

殺していないと聞いて大沼は心なしか安堵したような声を出したが、しかし、直後に帆足の言ったことは正しかった。今ここで気を失うということは…、近い将来の焼死を意味する。
最凶と名高い監獄で看守をしているような人物だから、腕に覚えはあったに違いないのだ…、しかし相手が悪かった。
スラムの狂犬、帆足和幸。逮捕時にも1名の死者と数名の負傷者を出している。最終的には秘密警察の能力者で編成された特殊部隊を動員し、どうにか取り押さえられたくらいだ。
その帆足にとってみれば、格闘の心得がある程度の相手なら、力を使う必要もない。それこそ赤子をひねるようなものだ。

「お前、強いんだな」

大沼は、暢気にも、そんな感想を漏らした。呆気にとられたというほうが正確かも知れない。スラムでいくら有名でも、その世界に関わりなく生きてきた大沼が帆足の名を知る由はない。
そもそも大沼はこれまでに、人が本気で人を蹴るところなど間近で見たことは一度もなかった。圧倒されたのも無理はない。

「ほざきやがって、貴様のほうが千倍強い。ほら、さっさとそいつの服を剥いで、着替えろ。早くしないと火が移る!」
「わ、わかったよ」


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