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――大沼のもつ破壊力は素晴らしかった。轟音をたてて崩れ落ちたコンクリート壁の破片、そして早くも廊下の内装部分へ燃え移ろうとする炎を前に…、帆足は暫時、動けないでいた。
自身も、それなりの使い手のつもりだったのだ。しかし初めて自分以外の能力者がその力を惜しげなく使うところを目の当たりにし…、帆足はこの世の広さ、天の高さを思い知った。

「…やべぇ…、桁違いだ」
「ん、何て」
「何も。それより…、」

覚えずも口からこぼれ出た言葉を拾い直し、我に返ると、帆足はその崩れた壁から廊下を窺った。

「早くしないと、」
「うるせぇ、黙って少し我慢してろ」
「何がしたいんだよ」

背後から大沼が余裕のない声をかける。これから何をしようとするのか最初に説明しないのは、この時より十数年を経過した現在も直らない帆足の悪い癖であるが、当時の大沼がそれを知る由はない。

「バカ野郎。貴様、その格好で」

大沼に二度せっつかれ、帆足はようやくそこまで言った、しかしそこで看守がひとり駆けつけてきた。何をしている…!という声と、大股に走る靴音が急速に近づいてくる。

「言わんこっちゃない」
「いいから」

その看守は職務熱心にも、夜間の巡回中に突然鳴り響いた爆発音を聞いてすぐさま現場へ急行してきたわけだったが…、無残に崩壊した壁と、本来ならばほの暗いはずの廊下を照らす炎を目の当たりにし、本能的に足を止めた。
…そういえばここは独房棟、人間離れした超能力を持つ化け物どもがズラリと収まっている。不意にそのことをはっと思い出し、彼は身の危険を感じて、背筋に寒気を覚え一瞬怯んだ、
その一瞬が命取りだった。
帆足が陰から躍り出て、みぞおちに肘で一撃、倒れたところを間髪入れず飛び掛かり、頭へ強烈な蹴りを食らわした!


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