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そこまで考えが巡ったところで、岸本の頭の中を高速で展開していた思考の糸がプツリと途切れた。そして彼は本能的に後ろを振り向いた、そうだ、まずは状況の確認だ。
果たして、スラィリーは、まだその場を動いていなかったが…、マスターはじっとこちらを見下ろしている。岸本は身体が縮み上がるような思いがした、生きた心地がしないとはまさにこのことだ。
なぜ襲って来ないのか。取るに足らないということか。いやまさか、あれほど派手な奇襲を仕掛けてきたのだ、眼中にないなど考えられない。果たして次にはどうする気か。俺を殺すつもりなのか…、
しかし依然としてスラィリー、いや、マスターは何の動きも見せない。岸本から視線を外すことすらしない。…いつでも殺される、そのタイミングは向こうが握っている。
視線を外せば、その瞬間に襲われそうだ。眉間を汗が伝う。しかし…、木村は重傷だ。いつまでも、あるいは殺されるまで、ここで睨みあいをしているわけにはいかない!

「…うらあぁッ!」

岸本は覚悟を決め、乱暴に木村を背負うと、一目散に駆け出した。気絶した人間を運ぶのはある意味では死体を運ぶのと同じで、
自主的に肩を掴むことすらしてくれないため、普通に人を背負って歩くのとは比べ物にならない労力を要する。
しかしこの時の岸本は、いわゆる火事場の馬鹿力の状態にあり、木村を重いとは感じなかった。そして何度も転びそうになりながら、奇跡的に一度も転ばず、どうにか、本隊のいる作業現場へと駆け下りた!


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