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「…すまない」
「構わない、慣れてる。まあ、仮に、仮にだぞ、さっき俺が言ったような心理が働いていたとしてもだ、それは別に恥じることじゃない。
 軍人は祖国を護るためにこそあると俺はかつて教わった。その祖国が不幸にして事実上の占領下にあるなら、まず独立を願うべきだ、何もおかしいことはない。
 やるべきことをすべてやって、そのあと…、最後に必要になるのは、情熱だ」
「…」

幹英は視線を下へずらして黙り込んだ。本人は頑なに否定するものの、広島自衛隊への入隊直後に武装解除を言い渡され、それでも自衛隊を離れず、
近年やっと軍隊らしいことをやり始めたこの組織において運良く幹部までのぼり詰め、重大な作戦に関わり、そしていま好機を迎えようとするその内心の躍動はいかばかりだろうか、
そのはやる気持ちに自分自身を見失うことのないよう自制することに彼は必死なのだろう…、とアレックスは理解した。

「まあ、その時のために、今は取っておくのもいい。そんな事よりもだな、キミに相談がある。
 今回の作戦は引き受けたが、やはり不安は残るから、従来よりも見張りを増員して臨もうと思うんだ。どこに、どれだけ配置するのが妥当か」
「ああ、そのことなら。そうだな…、」

――そうして、アレックスと幹英が相談のうえ導き出した結論は、10箇所に数人ずつを、1時間交代というものであった。人数は場所によってまちまちだが、
10箇所というのはこれまでよりも格段に多い。見張りの範囲を広げて相手の動きを早期に察知し、撤収に余裕を持たせようという狙いだ。

そのうちの1箇所…、防空壕掘りが行われている現場よりもだいぶ斜面を登った場所が、岸本の命じられた持ち場だった。


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