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「いいか、我々は今までにあの現場と周辺域とその他とで、合計11回スラィリーマスターに遭遇している。だが、そのうち我々に大きな人的被害が出たのはたったの1回」
「それはその時の教訓によって、ユーノウ、以後の作戦では撤収の判断が速くなったから…、」
「まあ待て」
幹英に詰め寄ろうとするアレックスを制し、再びブラウンが口を開く。
「言い出したのは私だ。幹英には裏づけ調査をしてもらったにすぎない」
「それなら聞かせて貰おうじゃないか、その調査結果を」
アレックスの言葉を受け、幹英はブラウンに目配せをした。調査の詳細について喋ってもいいのかという確認だ。これにブラウンは黙って頷く。
「とにかくだ、広島自衛隊に死人が出たのは最初の1回のみ。後の10回は、被害が出ても精々骨折だ。命にかかわる怪我をした者はいない」
「それはさっき聞いた。まさか1回だけなら何かの間違いかもしれないだとか、どっかの新聞みたいなことを」
「そんなことは言わない。まあ、メディア批判はまた後日、酒でも飲みながら聞くとしてだ。俺は別に確率の話をしたいわけじゃない。
俺だってヒマじゃないんだからな。確率の計算だけならマーティに自分でやって貰うさ」
「ほう」
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