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そうして徐々に充実し始めた装備を実際に使っての軍事訓練が、もっぱらアレックスの仕事である。
何を隠そう、彼は少し前まで難攻不落の名古屋防衛軍で最前線を張った指揮官だったのだ。教官としても申し分ない。
しかしそれが何故、今はこの田舎軍隊に身をやつし、果てには、ありんこの大群を率いてせっせと穴を掘っているのか…、
広島自衛隊内の噂では、なんでも、些細な軍律違反で追われるように退役したらしいとか、まことしやかに囁かれているが、
そこまでの功績を考えれば、それで軍を追放されるのは不自然というもの。真相は一切、謎に包まれている。

ともかく、そのアレックスは…、この防空壕改修作業に100名を超える人員を一度に投入することに対し、当初、難色を示した。
その理由は簡単で、現場の山ではスラィリーマスターの目撃がたびたび報告されているからだ。
群れに属しない単独行動のスラィリーがフラリと現場に現れた程度ならば、彼らは曲りなりにも軍隊であるから、撃退することは難しくない。
しかしマスターを相手にするとなると、とるべき行動はまず退避だ。その場合、多勢がアダになることも充分に考えられる。
アレックスは事前に、そのことをブラウンに対し主張したが…、しかしブラウンは笑顔でアレックスの肩に手を置くと、こう言った。

「大丈夫だ、アレックス。彼は我々の敵ではない」
「はあ?」

アレックスは、言っていることがわからないというジェスチャーをやや大袈裟にして、ブラウンの後ろに隠れるように控えている日本人をキッと見た。

「どういうことだか説明してくれ。どうせキミが言い出したんだろう、幹英」
「いや、まあ…、その可能性がある、と言っただけで」


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