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「無人機なんて弾幕に毛の生えたようなものだと思っているでしょう。
確かに、コンピュータ制御されたシステム同士に戦いをさせておくだけでは、五分以上の戦績には中々なりません、
むしろ文京のほうがシステムにもマシン自体にもお金がかかっているでしょうから、こちらがやや不利です。
しかし、名古屋の無人機システムも、やや旧式ではありますが…、全機、簡易カメラを積んでいて、マニュアル操作が利くんですよ」
喋りながらも山本は的確に操作を続ける。一体、一人でいちどきに何機を操っているのだろうか、三人は目まぐるしく切り替わるモニタの中の風景を見つめた。
「相手は所詮コンピュータですから。ちょっとした戦闘機乗りの経験がある者なら、わりと簡単に出し抜くことができます。こうやってね。
自分が戦闘機に乗ると、その一機しか操れませんが、これなら操作の切り替えひとつで、理論上はすべての無人機を」
「はあ…」
井端は思わず唾を飲んだ。山本は簡単に言うが…、人間業でないとはこのことだ。
「そうだ、中佐。あらかじめお聞きしておきたいんですがね。食事はここへ運んでもらうことはできますか」
「あ、ああ、わかりました。そのように指示しておきます」
突然、名指しで話しかけられ、井端はハッと我に返った。
「定食は肉と魚がありますが…、」
「では中佐のお勧めのほうをお願いします。…さ、ここは自分がどうにかやっておきますから、皆さんはお忙しいでしょう、お戻り下さって結構ですよ。
…昼過ぎまでには開戦時のラインくらいまで行けるかな、もう少しかかるかな…、いやさすがに有人機が出てくるかな」
結局一度もモニタから目を離すことなく顔合わせを終えたことにしようとする山本の背後で、李は呆気にとられたままの井端を軽く小突いた。
「ほら、いつまでも見学をしている暇はないぞ。ああ仰って下さっていることだし、また面倒事が増えたからな。すでに耳に入っているかも知れんが、昨夜、文京横浜の国境付近でテロがあったそうだ」
「ああ、輸送車が襲撃されて、文京軍の兵士が死んだとか…、でも、それ以上のことはまだ」
「続報が入っている」
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