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事態がよく飲み込めず、井端は数回瞬きをした。
「…とにかく、会わせてくれ。今どちらに」
「中佐が戻られるまでお待ち下さいと言ったんですけど、それじゃ早起きしてきた意味がないからって。早速現場に入って貰いました」
「いきなり現場に?…それもひとりでか?」
「いえ、ビョンさんがついてくださってます。こちらです」
「こちらって…」
行き先を告げず、荒木が先に立ってスタスタと歩き出したので、井端は仕方なくそれに従った。
司令室前の廊下を出て、基地の端へ、そしてやがて突き当たりに位置するエレベーターに乗り込むと、荒木は「閉」のボタンを押した。
「管制塔じゃないか。こんなところに、いきなり外部の人を…」
「外部たって、防衛軍の軍人には変わりないじゃないですか?」
「そりゃ、そうだが。しかし」
『行き先ボタンを 押してください』
ボソボソと喋る井端の声を遮って、エレベーターが突如、合成音声を発した。
荒木は慌てて最上階のふたつ下のフロアのボタンを押す。するとようやく、エレベーターは微かな音をたてて上昇を始めた。
「……」
「どうりで中々動かないと思ったら、あはは、やだなあそんな目で見なくてもいいじゃないですか。とにかく、助っ人さんの扱いに関しては俺に言われても困りますよ。ビョンさんに指揮権預けて出かけたのは中佐でしょ」
「そうだったな…」
「着きましたよ」
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