386
☆ ☆ ☆
「あー…、夕べは飲みすぎたな」
道場の玄関先へ立つ森野の背後から、永川がのっそりと姿を現した。
「まあ、時間も遅かったしな」
「…」
森野のフォローに応えるでもなく、ブーツの足を引きずりながら横へしゃがみ込むと、永川はもたもたとした手つきで靴紐を縛る。
「うぇ、下向くと気持ち悪りぃ」
「大丈夫かよ」
「…午後までにはなんとか」
予定では今日の日没後に戦いの火蓋が切って落とされることになっているはずだが…、これはもしや延期になるのではないか、と森野はその様子を見て思った。
「それより森野あんた、あのあと冷蔵庫開けたりしなかったか?」
どうにか靴を履き終わり、かかとで二度ほど地面を蹴ると、永川は言った。その問いに対し、森野はうなずく。
[NEXT]
[TOP]
[BACK]