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実のところ、充分に成長した今となっても、ヨモギには人の言葉が充分には理解できない。伝わってくるのは沈痛そうな声の調子と、断片としての単語がいくらか。
それでも、その声と表情、そして先刻長老にきつい調子で何事かを叱責されていたことから、何についての話なのか、おおよその見当はつく。

「三人おって、ふたり半殺し、残ったひとりであんだけ追っかけられとったら、もう充分じゃろ。あんだけの目にあって、あんな素人がまたウチらにちょっかい出しに来るとは思えん、…そう思って、」

この辺りについての梵の意見は奇しくも、スラィリーハンターである永川と一致した。永川も前日、条例違反を告発しようとする青木に対し、もう制裁は充分だという旨の発言をしている。しかし、その発言の出た背景はまったく違うと言っていい。
永川は技量の伴わないまま山へ入るハンターには手厳しい。彼らは自殺に来るのだとさえ思っている。
それでも、旧友に背負わされた使命があるから、彼は私利に関係なくたびたびスラィリーと闘っている…、全国からやってきて自ら命を投げ打とうとする彼らを救うためではなく、二次災害の防止のために。
さらに、スラィリーを殺すことについても彼は、特に抵抗はないと言い切った。軽率な人命を重しとせず、その反面、落ち度のないスラィリーの命も何とも思わない、
究極的には自身か親しい誰かにさえ危害が及ばなければ、後はどうでもいいと言うだろう。
彼が昨日死に損なったハンターに対して一片の温情を見せたのは、そうすることでこれ以上何か自身の手が煩わされることがないからで、つまりは言うだけタダなのだ。


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