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☆ ☆ ☆

「またウチのもんが、あいつに殺されたって言うじゃないか。え?」
「…俺も見たけぇ、違いない」

一頭の、これまた巨大なスラィリーが、梵をきつく睨みつけながら言った。

「お前ちゃんと見回ってんのかい」
「すまない…」
「それで謝ったつもりかい!大体なんだ、ヒトを見下ろしてからに!!」

ここ、三次の山中の奥深くに、ただならぬ様子のしわがれ声が響き渡る。その声の主、早朝から怒りを爆発させているのは…、このあたりのスラィリーを束ねる長老だ。
スラィリーは本来言葉を喋らないが、この長老は狐のカーサよりもさらに随分長く生きており、よって狐が喋るのと同様に、人語を喋る。
しかし通常のスラィリーの倍ほどもある巨体が災いし、年老いた今では立ち上がるのもひと苦労で、大抵こうして足を投げ出し、地面にベタリと座っている。
…その長老に態度をきつく咎められ、梵はもっさりとした動きでスラィリーの首から地面へと降りた。

長老がいることからわかるように、スラィリーにもいくつかの社会があり…、マスターと呼ばれる彼は、現在、そのうちひとつの社会の住人だ。
彼が現在、このスラィリー社会で果たしている役割は主に二つ。ひとつは、ここの社会に属しているスラィリーがハンターに殺されるのを未然に防ぐためのパトロール、および、その現場に出くわした時にはハンターを排除すること、
そしてもうひとつは、スラィリーの住処を脅かすような開発の手が入った際に、その排斥を行うこと。
つまり本来ならば、昨日永川に殺されたスラィリーも、梵には救う義務があったのだ。その任務に失敗したため、彼はこうして叱責を受けている。


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