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☆ ☆ ☆

広島、前田オマエニ流道場にて。
時刻は夜中の二時を少し回ったころだろうか。森野はふと喉の渇きを覚えて目を覚ました。隣ではドアラが静かに寝息を立てて眠っている。
森野はそのまま眠ってしまおうと再び目を閉じたが…、やはり喉が渇いて眠れない。もしかすると、ここへ戻ってきた後、永川と山崎と飲んだあの酒のせいかもしれない。

「これはな、この辺の名産でな。スラィリーのトサカを焼酎に漬け込んだもんで、その名もスラィリー酒ってんだ」
「そないモッタイつけんかってもええやろ、まんまやんか」

森野の脳裏に、ものの10分ほどで風呂から上がってくるなり青い液体の入った瓶を得意気に突き出す永川と、その背後から氷を提げて部屋へ入ってくる山崎の姿がふと蘇る。

永川とともに森野が道場に戻った頃には、前田とドアラはすでに寝てしまっていて、出迎えたのは山崎ひとりだった。
そのまま寝床へ向かおうとする山崎を捕まえて永川は言った。酒を出してこい、と。
そして、そう言われた山崎が、なんの酒と聞き返すこともなく棚から出してきたのが…、その青すぎる酒だった。

「スラィリーのトサカってのは、青くないんじゃなかったか」
「そうだな。赤と緑の2色だな」
「そのトサカを漬けただけで、こんな色になるなんて。凄いな」

森野はその瓶から注がれる酒をみつめながら言った。何かのカクテルベース、あるいはカキ氷のシロップかと思うほどに青い。
その森野の質問を聞いて、人数分の酒を注ぎ終わった永川が、おもむろに瓶に貼られたラベルに目をやる。そして程なく口を開いて言った。

「…青1号、赤40号」
「…そうか」


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