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同じ移民の子と言っても、貧民街で育った帆足とは違い、大沼は早くに入ってきた移民の三代目である。
初代、つまり祖父の興した事業が成功し、地域にしっかりと溶け込んだ家に生まれ、それなりに裕福な家庭で、あの監獄に入るまでの日々を過ごしたはずだ。
しかしその帆足の言葉に、大沼はゆっくりと首を横に振りながら答えた。

「それは所詮、移民の中での違いでしかない。上から見れば、変わらないさ。その点、力者はここ所沢の、かなり有力な家の出身だ。
 今後、俺達が都市政府としてやっていくには、今までとは違ったものが必要なんだ。…つまり、頭と金が要るんだ。
 識者や有産階級の類を従わせるには、肩書きと家柄、つまり、生まれ育ちは大事なんだよ。俺たちと同じさ、あいつは他人にない力を持ってる。実戦には向かないが、権力を握るのに好都合な力だ」

大沼の口からそんな言葉が出たことは、帆足にとって非常に心外だった。大沼は本来、誰に対しても深く詮索をしない男だ。
だから帆足も、貧民街で育ち、相当の悪事を働いたというその事実以外…、自身の不遇について一度も大沼に語って聞かせたことはない。
帆足は大沼のそんな所が気に入っていた。そして、誰の出自にも関心なく、幹部の選定など、すべてにおいて平等だと信じていたのだ。
それが…、次の総帥を選ぶにあたり、まず重視したのが家柄だとは!

「大事なのは、能力のはずだ…」
「わかってくれ。それも能力のうちなんだよ。多くの人に耳を傾けさせる力だ。正しい言葉も、耳に入らなければなんの力もない。
 だから、ずっとあいつには広報をやらせて、まず顔を売ったんだ。今じゃ庶民にも金持ちにも、相当に人気がある」

帆足は口から飛び出そうになった様々の言葉を、どうにか奥歯で噛み潰した。小野寺が総帥に向いているかどうかについて、帆足は大いに疑問がある、
到底納得はいかないが…、大沼がもう決めたというなら、意見する立場ではない。そもそも、その大沼とて、さほどトップに立つべき才覚を持った人間ではないことは帆足も承知している。


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