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元をただせば、まだ少年の頃、刑務所の雑居房の中で偶然出会ったという大沼と帆足、その二人の絆が相当に固いのであろうことは、想像に難くない。
さらに、ありふれた賊の類にすぎなかった解放戦線を軌道に乗せ、革命成功まで牽引してきた、その功績が大きいことは、その時代を解放戦線のメンバーとして過ごしていない小野寺にもわかる。しかし…、
いくらなんでも、これは度が過ぎる。有害だ。
現在の都市政府として認められることを目指し、表の世界の道を歩むべき解放戦線にとって、帆足のこの性状はかならず足枷になるだろう。その存在をいつまで、なにゆえ、許しておくのか。
そもそも解放戦線云々以前に、これでは友人としてだって長くつきあえるとは思えない、すでに疎まれていたとしても何ら不思議ではない。
あるいは…、特定の人間の前で態度が変わるというのはよくある話だから、もしや総帥はこの鬼畜ぶりを知らないのか、
そうでなければ、単につきあいが長いというだけでは到底説明できる気がしない。
いずれにせよ、こんな男を幹部の頭に置いていては、都市政府など夢のまた夢ではないか、その夢は、あと少しで手の届くところまできているはずなのに…!
そんな小野寺の悲壮な思いを知る由もなく、帆足は外套の裾を裂き、その切れ端を使って、斬られた脚を縛っていた。
「だめです、鍵がかかってる」
先行した岸がまずコンテナを調べ、帆足にそれを報告する。
「壊せないか」
「…頑丈です。特殊な鍵だと思います」
「なら、ちょっと目先を変えればいい」
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