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「できることなら、元いたところに返してやれないものかと私は思いましたが…、収容先の病院の院長が知人でしてね、彼に頼み込んで一度面会を果たし、すぐにそれは不可能だと悟りました。
何せ、病室のベッドと壁の隙間に潜り込んだきり、終日、ほとんど出てこないのです。極度の人間不信でした。
それを仮に外へ出したところで、社会復帰などできるわけがありません」
倉はあくまで事実を述べるにとどまり、憶測を語らなかったが…、つまり、スラィリーを仕留めたのち、その利益を寡占しようとした仲間に撃ち殺されかけたと、そのように聞こえる話だった。
そういえば…、スラィリー猟では他人とは組まない、と永川も言っていたことだ。
一攫千金の男の浪漫とも言われるスラィリーハント、その闇の部分を垣間見た気がして、森野は不意に寒気を感じた。
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