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「…まあ、致し方ないかの。ナー、くれぐれも無茶をさせんようにの」
「承知しております」
俺のほうでやる、ということは…、
この後出掛けるというのはつまり、修業をするということだろうか。しかし無茶って一体…、
そう思って森野が永川に話しかけようとした丁度そのとき、突然、ニュースキャスターの語調が変わった。
『ええ…、緊急ニュースです。只今入りました情報によりますと…、』
災害か。それとも戦争関連か。食卓にわずかな緊張が走る。
『聖都神宮が非常事態宣言を発令しました。繰り返します、聖都神宮が非常事態宣言を発令です』
「何があったんじゃ」
「神宮はいま、文京と交戦中ですが…、」
誰に聞くともない前田の言葉に、森野が答えた。
「しかし…、文京の主力部隊はほとんど名古屋東戦線に投入されているはずです」
「それでも、神宮と文京の戦力差なら」
「いや、まさか。神宮のもつ聖都騎士団は、物量こそ少ないが、隊員は精鋭揃いだし、何より防衛戦は得意のはずだ。それが非常事態宣言を出さねばならないほどのことになるとは、一体、何が」
『聖都神宮より映像が届いています』
パッと映像が切り替わり、画面には演説台に立つ金髪碧眼の男が映し出される。
「…魔将、ガイエル」
その画面に映った姿を見るや、森野はつぶやくように、その名を口にした。
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