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「そんな大物が遠路はるばるここまで来るなら、出発時刻云々以前に、事前情報があっても良さそうなもんだがな。
 それがないってことはだ、実はすでに退役していて軍属ではないか、あるいは休暇でも取って個人的に来ているかだが…、
 自分で軍人だと名乗ってるんだろ、それに今の名古屋防衛軍は、とてもじゃないが長期の休暇が取れる状況とは思えない」
「…危機的なのか」
「危機的だね、ここ十数年にないくらいに。東戦線は崩壊寸前だそうだ、とにかくものすごい攻勢らしい、もしや本気で名古屋を落とすつもりなんじゃないのか、ってほど」
「まさか」
「まあ、俺もまさかとは思うがね…。ただ、都市が陥落するっていうのは、ありえないようでいて、過去に例がないわけじゃないからな。
 仮に、仮にだぞ、文京が本気で覇業に乗り出したんだとしたら…」

そこで青木は言葉を切り、かわりにしかめ面をした。永川もそれにうなずき、理解を示す。
万が一、名古屋が落ちるようなことがあれば、次の前線は西宮だ。
西宮と広島の間には例の不平等条約がある。西宮が本格的に戦闘態勢に入ったら、広島も相応の協力を強いられることだろう。
そうなれば生活に影響が出るのは勿論のこと、もっと言えば、自分たちやその近しい人が戦闘区域の後方支援あたりに駆り出されることも、決して、ないとは言えない。

「そんなことになってたのか」
「うん。…てことは、そうか、向こうもてんやわんやだろうから、情報の発信がそもそも遅れてることは考えられるか。まあ、それでも、いずれ聞こえてくるんじゃないかと思うが…」


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