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つまり、スラィリーマスター討伐を目的に名古屋防衛軍から永川のところへ人が派遣されて来るのであれば…、その旨があらかじめ、名古屋防衛軍から広島自衛隊、そこからブラウン、青木、最後に永川というルートで通達されてくるはずなのだ。
もっとも、永川自身は自衛隊に協力する気がないから、たとえ事前情報と丁寧な依頼と、それにいくらかの政治的な圧力があったところで、森野に戦力としての目処が立たなければ追い返したに違いないが…、
それが一向に知らされないのは、単に青木がこの話をただのスラィリーハント目的と勘違いし、知らせるまでもないと思って黙っているからではないか、と永川は考えていた。
しかし、名古屋からの来客自体を青木が把握していないというのなら、話はもっと面倒だ。
「もしかしたら情報が遅れてるだけかもしれない。そいつ、いつからいるんだ」
「昨日の夜に俺の家へ来た」
「家、ってあの掘っ立て小屋か」
「実家に来るわけないだろ。あと、掘っ立て言うな」
「それなら、仮に航空機で移動してるとしても…、遅くとも昨日の昼すぎには名古屋を出ている計算になる。まあ、普段からそんなに自衛隊の情報が速かった試しもないが…、それでも、丸一日なにも聞こえてこないのは、いくらなんでもおかしいな」
「俺もそう思う。だからあんたが忘れているのかと思って」
「…そいつ、本当に名古屋なのか?他所のスパイの可能性は?」
「いや、かなり有名な人物だし、実力からいって本人に間違いなさそうだ。だから名古屋には違いないと思う」
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