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「そんな落ち込むことないだろ。誰だって仕事中の顔は違うよ。それに、あの人の生きてきた世界は特殊すぎる。暴露本書けば多分売れるぞ、ただ内容がヤバすぎて出版できないだろうけど」
「そうそれ。思たんやけど、テロリストやったとか、指名手配やったとか、総帥のこととか、組織のこととか…、僕らなんかにぺらぺら喋ってえーもんなんかな」
「いいんだろ。今は自衛隊の飼い犬、っちゃ聞こえは悪いけど…、とにかく自衛隊の保護下にいることは確かだから、警察もあの人に手出しができない。つまり素性を隠す必要がないんだ。
組織にしたって、仮に俺達総帥の本名が大沼幸二で、顔から火が出る能力者だとか知ったところで、俺やお前になにかできるわけじゃなし」
「せやけど。じょーほーってどっから漏れるかわからんねんで?」
「それを言うならさ。あの話がどこまで本当かもわからないわけじゃん。所詮は本人の語る武勇伝だからな」
「ああーそっか。そやなー。全部ウソかもしれんねんな」
「まあ、そうは言っても…、話に矛盾したところもないし、8割方は本当じゃないかと、俺は勝手にそう思ってるけどね」
「じゃ2割がウソなんや」
「いや、数字は適当だよ?」
そうして二人がひそひそと喋っていると、程なく青木が戻って来た。その手には茶封筒を持っている。
「はい、じゃあこれ、山崎くんの分ね」
「わあ」
手渡された茶封筒にはしっかりとした厚みがある。お年玉を貰った子供のように、山崎は目を輝かせた。
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