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「…しょうがない、じゃあそれでいい。で、お役所の報酬は。今回駆除依頼だろ」
「ああそうそう、それ幾らだっけ、と…、…お、10万だな。難しい仕事だったから若干高めの設定だったみたいだ。良かったな」
「じゃ、その10万だけいま現ナマでくれ。残りはいつもの口座に振り込んどいて」
「10万だけ?なんで?」
「助手の取り分」
「ああ、なるほどね…、じゃ、現金出してくるから、ちょっと待っててね」

そう言って青木は事務所の奥へ消えた。その姿が見えなくなるのを見計らい、山崎が隣に座った永川に小声で話しかける。

「な、あんないつもわーわーお金の交渉とか、してるんか」
「してるよ。大事な話だからな。それに、一度やりあうのが習慣になると、向こうもそのつもりで最初の提示してくるし、こっちもそのつもりでふっかけるだろ。
 別にそんな一円でも多く欲しいわけじゃないけど…、こっちが遠慮して向こうを儲けさす事もない、取り分は取っておかないとな」
「そんなんわかるわ。シャカにセッポーやで。そぉやなくて、いつもあんな大声でギャーギャーやっとんのって」
「ああ、やってるよ。あの人はなんせ、経歴聞いただろ、俺らとは経験違うし、度胸が座りすぎてるから…、普通に話してもノラクラかわされるわけ。
 だから、通したい主張は本気で怒鳴るくらいで丁度いいんだよ。そうすれば向こうも多少本気になるから、そのほうが交渉がしやすい」
「あれでうまくいってるて、信じられへん」
「はは、そうかもね」
「…なんや今日は疲れたわ、ナーだけでもいつもと別人みたいに見えたのに…、勇人さんなんて、僕とは生きとる世界が違うんやんな…」

今日一日で急に世界が広がり、自分が随分とちっぽけな存在に思えたのだろう、山崎は溜息をつきつつ肩を落とした。


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