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「…そんで、どこ行ったんや」
「さあな、そこまでは。果たして奴に目指すゴールがあるのかどうかわからんが…、韋駄天が過ぎて風になったような生き様だよ。ただ、奴と親しくするうちに、俺も相当に影響を受けたんだろう、そんな人生も悪くないような気がして、思わず所沢を飛び出してきちまった」
「しかし、そう簡単に、組織を抜けられるものなのか?言い方は悪いが、地下組織だろう」
「普通は簡単ではないと思うよ。なにしろ、加入は3日で済むが脱退には3年かかるといわれる俺達だ。だが、俺が直談判してみた時の総帥の反応は、驚くほどあっさりしたもんだった。
あんたにゃ昔から随分世話になった、それがあんたの望みなら、てなもんだ。な、あっさりしたもんだろう。
俺達からの脱退に関しては、言い古された文句があるんだ。…俺達は来るもの拒まず、去るものは全力で追う、旅立ちに必要なのは鋼の意志と、ひとつかみの幸運。
その言葉を引き合いに出して、総帥は言ったよ。あんたにその運がなければ、いずれ舞い戻ってくる事になるだろう、その時にはまた熱烈歓迎しよう。しかしそうでなければ今生のお別れだ。アワハラの神の祝福があらんことを、と」
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