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「都市部に限れば反体制勢力の摘発のために西宮の監視が多少入っているが…、少し田舎へ行けば、相当に名の知れた前科者や、仮に指名手配だったとしても、ほぼ普通の生活、うまくやれば商売もできるだろう、福地はそう教えてくれた」
「その人、広島の人やったんか?」
「どうだろうな。そうかもしれんし、違うかもしれない。高山組へ流れてくる前に広島にいたことがあるっていうだけの、それだけの事しか俺は知らないんだ。どこの生まれ育ちなのかとかね、そういう身の上の話は、俺らの間じゃ第一級のタブーだからね。
それに、奴はひとところに長くは留まらないタチみたいだった。だから、広島も含めて、必要とされるままにあちこち点々としてきたんじゃないかな。ちょっと小耳にはさんだ話によれば、所沢にも、もういないらしい」
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