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そんなドアラの気も知らず、専心に忍び足をして、やがて手の届くところまで群れに近づいた森野は、ごくゆっくりとその場にしゃがみ、
これまたバカに丁寧な手つきでその中の一羽に両手を伸ばした…、そして、その胴体を両手でわっしと掴んだ。

「や、やった!」

と、喜んだのも束の間、突然手の中の鶏がバタバタと暴れ出した。

「おっ、うわっ」
「مشخثينقءفيِـي、گلينون(森野さん、落ち着いて)」

咄嗟に森野はまた深呼吸をして、どうにか鶏を放さずに済んだ。捕獲に成功したことで心が乱れ、気も乱れてしまったのだろう。何事も考えずに、ただ無心に運ぶのだ。

――いっぺん深呼吸したくらいですぐに気が静まるなんて、さすが訓練を受けた軍人さんですね。これなら、やっている間じゅう心を平らかに保てなくても、鶏を小屋へ運ぶことくらいはできそう、か。
…ということは、この訓練をクリアしても、ここで養いたい能力は完全には身につかないことになりますけど…、お師匠さんも「付け焼刃」って仰ってたことですし、きっとそれでもいいんでしょう。


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