133
「ところで今度のお弟子さんには、随分厳しいじゃないですか」
また聞こえた叫び声にちょいと片耳を傾け、茶を机の上へ移しながら、微笑を浮かべてカーサは言う。しかし、その指摘に前田は怪訝な表情をした。
「そんなこともなかろ。何はともあれ、まずは地鶏よ」
「いえ、そうじゃなくてね。あれが何の訓練だか、教えてあげなかったでしょう」
「いや、そんなことは…、…あれ、そういえば、そうじゃったの。お前さん見とったんか」
前田は言われて過失に気づき、ぽりぽりと頭を掻いた。その仕草を見ながら、カーサは微笑を崩さぬまま問いに答える。
「そりゃ…、見てましたよ。面白そうだもの。お師匠さんがわざわざ鍛えたいと言い出すんだから、どんな逸材なのかと思って」
「一撃とはいえ初めての手合わせで浩司を捉えたんじゃから、逸材じゃろ」
「そうですかね」
そう言ってゆっくりと茶を口へ運んでから、カーサはニヤリと笑い、そして言葉を続けた。
「浩司さんバテてたじゃないですか?」
「ふん。よう見とるの」
済ました顔でまた鋭く要所をつくその言葉に、前田は思わず苦笑する。
[NEXT]
[TOP]
[BACK]