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軽トラはそれから軽快に山道を登って農道を抜けてゆき、ようやく山崎が荷台から降ろされたのは、20分ほど後のことだった。
「うはぁ〜怖かったぁ〜。ほんま死ぬかと思ったわ」
「大丈夫だって。やまちゃんなら走ってる車から落ちたって余裕で着地できるだろ」
「そら、できるけど。だからってイヤやん、そんなん…」
大きく溜息をつきながら言う山崎を見て、永川はカラカラと笑った。そして、やがて再び表情を引き締めて言うには。
「さ、いよいよだぞ。気合入れてかかれよ」
「お、おう」
すこし緊張した声色で返事をする山崎の背後、青木が携帯の電源を切りながら近づいてくる。
「…現場の人間と連絡がついた。もう少し上ったところだ。
 ヤツも深手を負っていて、今は座り込んでいて動かないらしいが、その場所がさ、人んちの庭先だって言うんだよな…」
青木は言いにくそうにそう話しながら、永川の顔を見上げる。つられて山崎も永川の顔を見る。
その永川は宙を見つめながらひとしきりあごひげを撫で、考えを自分の中で確認するように、やがてごくゆっくりと口を開いた。
「…避難は間に合ってないんだよな、さっきの話だと」
「そうだな。家には住民が残ってる。…なにしろ手負いだから、急に暴れたりどうこうって事はないと思うが…、
 どうする?ヤツが少し移動するまで待ってから動くか?」
…青木の提案も悪くはない。獲物が手の出せない位置にいるときは、それが賢明だ。
なにしろこれはスラィリーハント、焦ってひとつ間違えれば大変なことになる、よって、こういう時は充分に手出しがしやすい状況になるまでじっと待つのがセオリーだ、が…。


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