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他人の食い残しとなれば、毛皮は損傷している可能性が高く、また肉質にも疑問が残る。
スラィリー狩りに使用できる道具は条例で制限されているが、密猟者も多い現状、規則が遵守されているとは言えず、
狩りの成功率を上げるために、劇薬をはじめとする様々の薬品が使用されることもある。
そうして得られた肉を、利益第一のブローカーがろくに検査せずに卸すと、健康被害が出やすいのである。
スラィリー肉自体は、所定の調理を行えばべつに有害ではないのにも関わらず、それでも犠牲者が相次ぐのには、こうした背景もあるのだ。
そんな訳で、儲けのことだけを考えるのなら猟師もブローカーも敬遠したい仕事だが、
永川が継いだスラィリー折伏術はそもそも、こういう時のための秘術であるから、
住民を守る使命を英心に替わって人知れず背負っている身としては当然、避けて通るわけにはいかない。
「そういうわけだな。…で、そちらは?」
ここまで仕事の概要を話して、青木は、永川の後ろに控える山崎のほうへ目を向けた。
眼前の二人のドライな会話、そして長いつきあいの中で見たこともない、仕事中の顔をした永川に少し圧倒されていた山崎だが、
そこは持ち前のあの性格、永川が紹介しようとするよりも前に、大きな声で名乗り出た。
「山崎浩司です!助手です!!」
「助手…?」
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