095

「な、話かわるけどな、ひとつ聞きたいことあるんやけど」
ようやく長い坂を下りおわって、やっと市街に差し掛かったころ、ふと思い出したように山崎が尋ねた。
「何?」
「僕ら一体どこ向かっとんの?」
その山崎の質問に永川は一瞬呆気にとられたような顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻り、それから口元に笑みをうかべた。
「なんだ。知らないでついてきてたのか。とっくに気づいてると思ってた。やまちゃん鋭いけど、肝心なとこ鈍いよね」
「え、どゆこと?」
山崎は目をぱちぱちさせた。鈍いと言われても、いかんせん心当たりがないから仕方ない。
「仕事だよ仕事」
「仕事?て何の?」
さらりと発せられた永川の言葉を、山崎はすぐに飲み込めず、そのままオウム返しした。
「俺の仕事って何なのさ。ひとつしかないだろ。ついさっき携帯に呼び出し食ったんだ。やまちゃん手伝ってくれるよねー」
傍から見ればいかにも善良そうな人懐こい笑顔で、永川は言った。ここまで言われればさすがに山崎も状況を理解する。
「手伝うて…、何それ、ナー、まさか僕に仕事手伝わそう思ーて連れてきたんか?」
「そうだよ、だからあらかじめ、借りますって断って出てきたじゃん。問題ないだろ」
「せやかて!肝心の僕には何も言うてへんかったやん!」
「お師匠さんがいいつったんだからいいんだよ。人にはセコイ言っておいてなんだ、怖いのか?」
「そんなん!スラィリーなんて、怖いに決まってるやろ、大体僕ハンター経験あらへんしぃ!やだやだ、絶対やだ、危ないやんか!!」
子供のように地団駄踏んで手伝いを拒む山崎を見て、永川は少し黙り、あごひげを捻って思案した。
そして、やがて口を開いて言うには。

「駄賃やるからさ」

その言葉を聞いた途端…、山崎の目の色が、変わった。


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