078

勝負の行方もさることながら森野の槍の性状が気になって、それを見極めるべく、永川は目を凝らした。さっきは一瞬だったが、今度はよく見える。色は青白い。長さは背の1.5倍ほどか。
うねりのある大きな刃の三叉の槍だ。複雑な刃先は使い手の技量によって生きるもの。それがおのずから発現したということは……、
こいつは、できる。
永川は覚えずも唾を飲み込んだ。片膝を立て、固く握りしめた両の拳を膝の上について身を乗り出す。
隣のドアラは自分も槍を出すべく右手を握ったり開いたりしながら鼻息荒く腹に力をこめて踏ん張っている。もしかすると、森野にできることはすべからく自分にもできると思っている節があるのかもしれない。
その二人の様子を横目で見ながら前田は少し首を伸ばして、永川の横へ置かれている時計を見た。9分を経過。残りは1分。
「…どうやら、勝負あったの」
前田が独り言のようにそう言った。槍にばかり集中していた永川は、その声にはっとして意識を目の前の勝負へと戻した。
森野が両手に槍(と布団たたき)を掴んで、山崎の左肩口から右脇まで抜けるラインを狙い、上段から叩くように斬りつける。それを山崎は後ろへ軽く退いて避ける、
細身の撫で肩を大きく上下させて呼吸する姿が、その激しい運動量を物語る。
さらに間をつめ、返す刀で右手に掴んだ槍を天へと振り上げる森野。山崎の背後は壁。斬り上げてくる槍先よりも一瞬早く真上へ跳んだ山崎の目に、右腕を思い切り振り上げ切って上体を逸らす森野の姿が逆さまに映った。
…頭上からこの腕を伸ばすよりも前に、あの長柄を戻せるやろか。間に合わんやろ。
名古屋さん、その槍の長さがアダにならはったな、脳天シバいたるわ!
隙あり!!

バシィ、という快音が鳴り響いた。そして。
「痛てええええええええッ!!!!!」


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