059

「西から、ですか…」
再び口を開いた立浪の提言に、井端は渋い顔をした。他から人員を借りる、すなわち内情が他所へ知れることになる。
西基地のトップは確か、死神の異名をとる辣腕の男だ。井端は実際に会って話したことがあるわけではないが、
もしも戦場から聞こえる評判どおりの人物ならば、とてもウソをつき通せる気がしない。
命令違反を組織的に隠していることがバレれば確実に、自分ひとりの処分では済まないだろう。
「それはつまり、森野の復帰は諦めることになりますが…」
「そうなるな」
ぴしゃり、と立浪は断言した。普段はへらへらしていても、こういう時には有無を言わさぬ威厳がある。
「ま、待って下さい。森野がどこへ行ったのかがわかれば、あいつはドアラを連れてて目立ちますから、
 見つけて連れ戻すのにそれほど時間はかからないハズです。仮に、うちの軍事勢力下なら、いろいろ打てる手もあるでしょう?」
焦ったように、荒木が話に割って入る。荒木は井端個人とは下積み時代から長いつきあいで気心が知れているものの、この会議の出席者の中では一番下っ端で年齢も若く、発言には少々勇気の要る立場だ。
しかし、荒木にとって森野は年齢も近く、同期入隊の仲。それに、先ほど新井を励ました手前、あっさり森野が切られてしまうのを黙って見ている訳にはいかなかったのだろう。
「どこ行ったかなんて、わかるのかよ」
「そ、それは…、」
ただでも及び腰の荒木に向かって、立浪が詰問する。そこへ井端が間に入るように答えた。
「数日前に、ヤツと話をしました。その時の様子では、おそらくですが、広島へ」


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