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つまるところ、間接的にそれは無理な相談だと言い切った永川から一旦視線をそらし、森野は思案した。
スラィリーをいくら狩っても所詮、億の金にはならない。そんなことは言われるまでもなく、わかっているのだ。
そこを、わざわざこの緊迫した情勢下、仲間を残して遠路広島まで、お前を訪ねて来ている、そのあたりから言わんとすることを気づいてくれるかと思っていたが…、
やはり口に出さねばわからないのか、つまり現実的ではないということか。
それとも、どこか何となく間抜けて見えるこの男、もしかすると単に思いつかないだけということも…。
そうだ。ただでも苦しい戦線を抜け、活路を求めてここまで来たんだ。このまま引き下がっては…。森野の頭の中、戦友たちの顔が次々浮かんだ。
このままでは、自身の弟子であり、なにより自分を信頼している見習いドアラマスターの新井はもちろん、
みなに申し訳が立たない。言うだけ言ってみないことには。その価値はある。言え、言うんだ森野将彦。
「……マスターを」
意を決して森野が、殊更低い声でその言葉を発したと同時に、気まずそうに机上を彷徨っていた永川の視線が突然、キッと森野の両眼を捉えた。
「今、何て言った」
「スラィリーマスターだ!」
急に険しくなった永川のその視線を跳ね返すごとく、森野は語調を強めて言った。
「まさか!!」


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