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「わかった、任しときー」
「よろしゅう頼むわ」
「そうじゃ、それとな、俺、お前に謝らんといけん。昨日は御免な。本当どうかしとったわ」
「昨日て、あぁ…。全然、かめへんよ」
「片足になったって、とにかく生きて帰りんさったんじゃけ。きっと神様がのー、お前をお師匠さんと引き合わしてくれたんじゃ」
「大袈裟やんなぁ」
その言葉を聞いて山崎は笑いかけたが…、対する梵の目は笑っていなかった。
――あ、これ本物や、笑ったらアカンやつや――。
相手の信教的価値観の片鱗を聡く嗅ぎ取り、山崎は咄嗟に自分の顔から笑い成分を消し去った。
「じゃあ、俺はお師匠さんとこ寄ってくけぇ、一旦寺に帰って昨日あたりからの話と明日くらいからの話しといて欲しいんよ」
「…俺?」
急に話を振られ、永川は驚いたというよりもむしろ面倒くさそうな顔をしたが…、梵は一切躊躇することなく話を続ける。
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