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「ああは申しましたが、こちらの食堂もちょっと見てみたかったのでね。いえ単なる興味本位ですよ。少し機械制御に任せて食事に降りようかと思っていたのですが」
「そうでしたか…、」
「中佐ご本人にお食事を運んでいただけるなんて、思いもしませんでしたよ。光栄です」

食堂を見られなくて良かったと井端は思った。カウンターはグランパス汁を巡って混乱を極め、怒号が飛び交い、そのうえ券売機は疲弊した男たちに蹴られて3日前から故障している。
現状の深刻さを思えばくだらない見栄だが…、しかし基地の責任者としてはそんなところを見られたい訳がない。

「しかしオニギリとはね。ハハハ」

皿の上のひとつを取って鷹揚に笑う山本に対し、井端はますます萎縮した。

「申し訳…、」
「知らずに誂えてくださったのだとしたら、中佐、あなたセンスがありますよ」
「…はあ…?」
「これなら片手で食えますからね。作業を中断せずに済む」

感心と、それから少しの呆れで、井端は言葉を失った。


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