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その姿を見て、梵はしばらく無言だった。お前は誰とも、何をしているとも聞かなかった。
何から尋問すべきか思案しているのか、とアレックスはまず考えた。しかしその後すぐに、あるいは尋ねたいことがないのかもしれないとも思った。
アレックスの着ている服は、カーキ色の、素人目にもわかる軍服だ。それを見れば、彼がさっきまでここで活動を展開していた広島自衛隊員のうちのひとりだということは察しがつくし、
その撤収が済んだ後に一人残ってここに隠れている目的など、少し考えれば誰でもわかる。偵察か暗殺のいずれかだ。わざわざ尋ねるまでもない。
しかし、だからといって…、アレックスも当然、そのまま黙って殺されるわけにはいかない。幸いにして相手は、言葉が通じる、人間だ。向こうが何も言ってこないのなら、こちらから弁解してみよう。さしあたり、いまこの場では…、暗殺の意思がないことを。

「…ソヨギ、エイシンだな」
「…」

その名を呼ばれた梵は応えなかった。


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