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ピロッ、とヨモギは鋭く鳴いて異変を告げた。そして視線を風上へキッと向けると、その巨体からは想像もつかないほどに素早い動きで立ち上がった。続いて梵が顔を同じ方向へ向ける。
…気づかれた、アレックスもほぼ同時にそれを悟った。なぜ存在が知れたのか、それもマスターではなくスラィリーに…、アレックスにはすぐには理解ができなかったが、今、それを思案している余裕はない。他に考えるべきことがある。
彼は簡単には物事を諦めない性質だ。目にも留まらぬスピードで反射的に自動小銃を構えつつ彼は思案した…、さて、どうすればいい。
ここから、果たしてどうすれば、スラィリーマスターの至近距離から、たとえ腕の一本くらいを損じても、生きて基地へ帰ることができるか………、
「誰かいるのか」
アレックスの頭の中、驚異的な速さで流れゆく思考を遮って、凛とした声が耳に響いた。
マスターだ。豪胆アレックスをして、これには思わずその目を見開いた、スラィリーマスター梵英心が、こちらに目を向け、口をきいた!
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