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小野寺が思わず声を上げたそのとき…、女は突然、脚を振り上げた。帆足の急所に膝を当てようと狙ったのだ。
しかし…、

「おっと」

軽くヒラリとそれをかわすと帆足は胸倉を掴んでいた右手を急に離した…、その途端、手から爆風が巻き起こる。女は後ろへ吹き飛ばされ、背中を壁へ打ち付けた。
帆足は獣のように獲物を壁へ追い詰めると、今度は小野寺が口を挟む間もなく、女の太腿を踏みつけた。
そして再びバックルに手をかけ、腰からベルトを一気に抜き取ると…、そのベルトを使い、女の両脚を縛り付けた。女も抵抗を試みるが、やがて力ずくで捻じ伏せられた。相手が悪い。

「早いとこ答えたほうがいいって言っただろ。こいつは何なんだ」

床に転がった女を見下ろすように側へしゃがみ、帆足は顎で黒いプラスチック塊を指しつつ、再び問いかけた。

「…知らない」
「はあ、知らんだと。それで済むと思ってんのか」
「本当に知らない!」

女は観念したのか、あるいはそうでないのかわからないが…、突然、大声を出して喚いた。

「帆者、これ以上は」

見かねた岸が声をかけた。帆足はその声に振り向くと、少しの間考え、そしてうなずく。

「そうだな。これ以上は無駄だろう。仕方ねぇ。おい、女、…時間切れだ」
「あのっ、くれぐれも乱暴な真似はっ!」
「んな声出さなくても、文京の女に興味ねぇよ」
「それだけじゃなくて」

帆足はそれに答えなかった。そして脚の傷を庇うように立ち上がると、再び腰の剣を抜いた。生乾きの血がこびりついている。


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