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「ふん、まあいい」
その岸に対する帆足の反応は、驚くほどあっさりとしていた。確かに、あの状況で拳銃を使って危機を回避したことを責められても困るが…、
それでも何らかの暴言を吐くかと思って、岸も小野寺も、誰もが身構えていた、その張り詰めた緊張の糸がプツリと切れ、誰からともなしに皆、息をついた。
しかしその安堵も長く続くものではなかった、帆足はおもむろに足元に視線をやると、突然その場へ膝を落とし、そこへうずくまる手負いの男の襟首を右手で乱暴に掴むや否や…、
いきなり左手の剣を振るい、気合一閃、その首を一刀のもとに斬り落とした!
「あっ、何を!?」
言動を咎めないのが正しいつきあい方と熟知している小野寺さえ、この時ばかりは声をあげた。
勢い余って飛んでいった首を目で追うこともせず小野寺を睨みつけ、右手に残った胴体をぞんざいにドサリと落とし、立ち上がりついでに剣に付着した血を振り払いながら帆足は捨てるように言葉を吐いた。いわく。
「てめぇがさっさと縛らねぇからだ」
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