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そうやって永川が無表情に薀蓄を語り、森野が痛みのあまり思わず畳に爪をたて、倉がその様子に軽く引いている丁度そのころ…。
文京と、その南に位置する港湾都市・横浜との国境付近を流れる多摩川沿いの幹線道路、
その上にかかる高架橋の上に、ひとかたまりの人影があった。

「本当にここを通るんですかね。もう予定の時刻を過ぎてますが…」
「そんなん、俺が知るか。あいつがここで張ってろってんだから仕方ねぇよ」

ひとりの若い男が時計を見ながら不安げに口をひらくと、横で腕組みしていた男が応えた。そこへもう一人、別の男が口を挟む。

「でも…、なんで総帥は突然こんなこと言い出したんだろう、しかも、輸送車を襲撃するだけのことに、幹部を3人も使うなんて」
「おかしいって言いたいのかよ」
「おかしいだろ。大体なんで俺達が、こんなところまで来て、わざわざ他所んちの荷物にちょっかい出さないとならないの。あんた、おかしいと思わないのか」
「俺には元々沼者の考えることはわからん」

彼らが喋るのを聞きながら、若い男は首をのばして暫し遠くを見つめたが、それらしい車列が認められないので、また腕時計へと視線を戻した。

少し風変わりないでたちをした彼らは、現在よりも5分ほど前にこの地点を通過しているはずの、文京軍の輸送部隊を待ち伏せしている。
ここは文京の中央基地と、横浜方面の前線である川崎基地との間に位置する道路だから、輸送車両が通ること、それを狙う者が出ること自体は、べつにおかしくも珍しくもないが…、
彼らは単なる地元の窃盗団ではない。れっきとした事実上の独立都市所沢の支配者、俺達こと解放戦線の人間である。


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