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「本来なら、修業で体内を循環する気の量を増えるにつれて、気脈なんて勝手に太くなるもんなんだがね。そうしてる暇がないから、いま、俺の気を指から無理やり貫通して、今ある気脈を切断している」
「まさかっ…、これを全身、やるのかっ」
「まさか」
永川は涼しい顔をして、喋りながら、淡々と施術を続けていく。また衝撃が走る。森野は思わず顔を歪めた。
「そんなことをしたら、あんた、しばらく立ち歩けなくなるぞ」
「え…、」
「それは、どういうことだ?」
恐ろしいことをサラリと口にする永川に対し、痛みと焦りで口をパクパクする森野に代わって倉が尋ねる。
「兄貴は素人じゃないんだからわかるだろ。俺が今やっているのは、ただ気脈を寸断するだけのことなんだから。
それがなんで気脈を広げることになるかって言うとだな」
「ああ…、なるほど、そうだな」
「わかったろ。そういうことだ」
倉は早くも納得顔をしたが、当然、これだけでは森野にはわからない。永川もそれを承知で、言葉を続ける。
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