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倉は必死の様相でマサユキを諭した。永川の性格、そして永川がマサユキを何とも思っていないことも、倉は百も承知である。
このままにさせておいたら、マサユキは元より、永川も何をするかわからない。とにかく力ずくで引き離すべく、倉はさらに腕を伸ばし、マサユキを抱え込もうとしたが…、
マサユキは身をよじり、その手からスルリと逃れると、突き出した両腕で、倉の胸板をドンと衝き飛ばした!

「あっち行ってろ!バァーカ!!」
「マサユキ!」

後ろへよろめきながら倉が見たその瞳、狂気に曇った瞳には…、しかし同時に強い意志も宿っていた。
事情のわからないマサユキの目に、高圧的に怒鳴り散らす永川、そして黙り込む倉の姿が果たしてどのように映ったか。想像するに難くない。
ただ気にしないでもいいなどと言われても、納得がいくはずはない。理不尽な思いが募るばかりだろう。
彼は彼なりに、突如降りかかった災難から、大事な人を守りたいのだ。少しばかりやり方が雑になったとしても、たとえわが身を挺しても!

…その庇いあう姿が余程カンに障ったらしかった。永川は鼻の頭に皺を寄せ、憎々しげに顔を歪めると…、チラと森野の顔を見て、不穏な声でこう言った。

「…そうだ森野、面白いもん見せてやるよ。こいつには真空管ってアダ名があってな…」
「…勝浩、」

その永川の言葉を聞くや、倉は大きく目を見開いた。これから来る危機を察知したのだ。
そして力任せに、引きずり倒してでも、マサユキをその場から退かそうとした…、しかし一瞬遅かった!

「やめろッ、」

その悲痛な叫びを切り裂いて、バチィン、と衝撃音が響いた。


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