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「ようやっと来たか」
通話の相手は、名古屋防衛軍の最高権限を持つ人物、落合博満長官だ。回線越しのかすれた声が、笑い混じりに返事をする。
「お前さんはもう少し、見通しが利くかと思っていたが。李将軍までつけてやったのに、随分、判断が遅かったね。やはり基地ひとつは、まだ、荷が重かったのかな」
「返す言葉もございません…」
ゆったりとした口調で、しかし厳しく叱責され、井端は搾り出すような声で謝罪を述べた。
「いいんだよ、そんな声出さなくても。今回はギリギリで間に合ってるからな。もしこれで仮にだ、あのガイエルの演説の後も、何も反応を示してこないようであれば」
そこまで言って、落合は不穏に沈黙した。1秒、2秒…、永遠のような時間が過ぎる。張り詰めた空気、高鳴る心臓、井端は脇から汗の流れるのを感じた。
「お前を更迭して、俺が直接、指揮を執ろうと思っていたところだけどね?」
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