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強烈な敗北感にうちのめされ、森野はドアラの前に膝をついた。理由はまったく理解できないが、なぜかドアラは地鶏を手なずけている。その腕に抱かれた鶏は実に鶏らしく首を回して辺りをキョロキョロするばかりで、暴れる様子もない。
森野ががっくりとその場に崩れてしまったのを見て、ドアラはその場にしゃがみこみ、森野の顔を覗き込もうとした。その膝にまた一羽、地鶏が乗ってくる。
最早鶏がどうこうよりも、ドアラにできて自分にできないということが、森野にとっては重要だった。なにしろドアラにできることはすべからく自分にもできると思っている森野であるから、そのショックは計り知れない。
ひとしきりうちひしがれた後…、ふと、森野は、あることに気づいた。
そういえばさっきから、地鶏の攻撃を受けていない、気がする。
気のせいだろうか…、いや、気のせいではない。先刻とはうって変わって、どの鶏も、こちらを警戒していないのだ。
みな一様に、翼をばさばさやったり、地面をつついたりしている。森野には関心も示さない。
一体これがどういうことなのか理解できず、森野はしばらくまた呆然としたが…、突然ハッとしたように瞳を輝かせ、すっくと立ち上がった、
…理由はわからないが、とにかく地鶏は沈静化した…、掴まえて小屋へ押し込むなら、今がチャンス!!
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