008

森野の口から出た奇異な名前を、永川はしばし天井を眺めるようにして、記憶の中から手繰り出した。
「…名古屋の都市防衛のために作られた、巨大ロボット」
「そうだ。メルキドのゴーレムみたいなもんだ。あいつが普段、周辺都市からの干渉をかなり防いでいたんだが、
 残念なことに今年で耐用年数が切れた。そのせいか、夏場には故障に見舞われてな。今は防衛ラインとして機能していない」
「それで…、名古屋は大丈夫なのか?」
他都市の事情に疎い永川も、名古屋が地理的に、東西を強敵にはさまれていることは知っている。
「今のところは、俺の仲間が頑張っているが…、悪いことに、ビッグ・ドメは動力源の原子炉に障害をきたしていてね…、このまま放置するのも危険なんだ。
 それを理由に、西宮と文京、さらには海外から、買い取って修理がしたいというオファーが来ている。
 自前で修繕ができないのなら、いずれかに売り渡さなければならないが…、それはなんとしても避けたい」


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